This site is dedicated to promote a better understanding of methods and theory of Nautical Archaeology to a Japanese public.

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新しくWeb-Pageをつくりました!!

http://nauticalarchaeologyjp.com

 

 

水中考古学についての本は幾つか出版されており、特に英語が読めるのであれば簡単に情報を得ることができる。しかし、日本語のWebをざっと調べたところ、基本的な水中考古学解説はまったく見当たらなかった。 そのため、船の考古学・水中考古学入門とでも言おうか、日本の一般の人達、また考古学者にこのような学問が存在することを知ってもらいたく、“水中考古学の父”と呼ばれるジョージ・バス先生の創り上げた学問の根本原理を分かりやすくここに解説した。 発掘作業、保存処理など細かい技術的面の説明ではなく、何が重要であるが、何が一番基本的であるかを考えながら書いてみた。 

自分の研究内容は、いまのところ適当な単語が存在しない。 一番近いものでは英語でNautical Archaeology と呼ばれているが、幅の広い分野であることを理解してもらいたい。 また、水中考古学のようではあるものの研究対象が水中に限っていないこと。 船の研究ではあるけれど、本当の目的は船を作った人間の想像力、探検心に興味がある。  

このWeb-Pageでは、たんたんと自分の意見を述べてみた。 後にもっと筋の通った論文のような形で体系的に考古学を語って見る予定であるが、その前にこのWeb-Pageを作ってみたにはわけがある。 日本ではトレジャー・ハンティングがまだ盛んではないが、これから増える可能性がある。 金銭獲得を目的とした発掘ではなく、考古学を基本とした学問を今すぐに日本で定着させたい。 欧米などでは学問としての水中遺跡の重要性を民間レベルで高める以前にトレジャー・ハンティングが盛んになってしまった。 日本においてそのような失敗は避けたい、それが私の願いである。 また、金銭獲得を目的としたものではなく考古学まがいの水中遺跡調査活動が最近日本では話題を呼んでいるが、そのような活動は本来の学術的な水中考古学とは無関係である。 過去を大切に思う気持ち、遺物ひとつひとつの重要性を重んじること。 それが最初の一歩である。これを理解しないと考古学とは言えないはずだ。

船の考古学・水中考古学とは?
何をどうやって調べるのか?
水中考古学方法論
2 サーヴェイ
3 発掘
4 遺物整理
5 保存処理
6 調査・研究
7 出版・報告
参考文献

リンク

 


 

船の考古学・水中考古学とは?

 

簡単に言えば、船舶、船の考古学、または、水中考古学。 ただし、水中考古学というと誤解を招く可能性がある。 この学問の対象とするものは “船”であり、陸上でも船は時折発見されている。 船が水面下にある可能性が高いため水中考古学と呼ばれがちである。 (陸にあった遺跡が水没した場合は、その遺跡が何か船に関係しない限り、この研究の対象にはならないことを理解していただきたい) 水中に遺物があるため、陸上の考古学にはない問題点を考慮しなければならない。 そのため発掘調査・保存処理方法は専門知識と技術を要する。 ただし、考古学の一分野であるため、基本的には陸上の発掘と同じ、もしくはそれ以上に最善の注意を払って発掘し、遺物の実測、保存処理、調査の報告をするべきである。

船の考古学といっても幅の広い学問である。 まず、 船の構造、歴史的変遷がすぐに思いつくはずである。 この他にも、船の上で使われた道具、碇、そして、港の構造なども含まれる。 また、人と船との関係もこの学問の重要な研究対象である。 船での生活、たとえば何を食べていたのか、また、先頭と船乗りの関係など社会学的諸問題も考古学・歴史学資料から学ぶことができる。 過去の戦争では、船が重要であったことは、言うまでもなかろう。 海戦術、そして、戦争が社会に何をもたらしたかを学ぶことも大切である。 海上貿易は特に重要な分野であろう。 どのようなルートを使っていたのか、また、なぜその貿易ルートが使われるようになったのか、なにを取引していたのかなどを主に学ぶ。 この他にも、貿易がお互いの社会になにをもたらしたのか?を考えることも忘れてはならない。 海を隔てた別々の文化が、交流を始めたとき、どのような変化が起こるのであろうか? 

一言で言うと、人間がどのようにして“陸”という鎖から開放されて“水”という環境を克服してきたかを学ぶことがこの学問の第一の目的である。 人間の好奇心、冒険心がなければ人はいまだに船を作りはしなかっただろう。 人と水との関系を考えるおもしろさ、そして人間の何事にも挑戦する魂を肌で感じることができること、それがこの研究の一番の魅力ではなかろうか? 

 

ポルトガルにて。 朝のダイブの後、お昼メシが待っている (写真 Tiago Fraga)

船の構造を遺物から再現して研究する

 

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何をどうやって調べるのか?

人と水との関係を研究するにはどのような資料が必要であろうか? ざっとみてみよう。 いくつかカテゴリーに分けてみると 1.文献・歴史資料 2.考古学資料 3.人類学・社会学・エスノグラフィー 4.船舶構造・建築学的資料 (5.ひらめき・対照・その他)などがあげられる。

人は昔から水と接してきた。 歴史資料にはさまざまなものがある。 絵画、旅行記、詩、などから船の構造、人と船との関係を学ぶことができる。 また、船の記録も時折残っている。考古学資料は、もっとも直接に過去の遺物を観察できる方法である。 化学分析資料もこの中に含まれよう。 過去の花粉の分布、船の鉄釘の化学分析など、直接データが語るわけではなく、解釈することによって過去のなぞを解き明かす資料もある。 社会学的資料、とくに伝統的船大工から学べることは大きい。 建築学もまた、重要な情報を提供する分野である。 船は人や物を運ぶ道具であるため、その必要に応じ様々な構造を要する。 船の大きさ、重さ、目的を知る上で建築学は必要不可欠である。 最後に、ひらめき・思いつきも忘れてはならない。 また、他の地域と比べることもある。 これらは決定的証拠にはなりえないが、他の証拠を探す鍵となることがよくある。 

ここでは、第2のカテゴリーである考古学資料の研究方法論を解説している。 他のカテゴリーは改めて説明するまでもなく学術研究が進んでおり、ここで深く方法論を語る必要はないと思われる。 私は、考古学者なのでこのカテゴリーについて研究を進めている。 ただし、忘れてはならないのは、ひとつのカテゴリーに絞ることなく様々な分野からの証拠が集まって何かを立証していくことが大切である。 発掘作業が重要視されているようだが、発掘は考古学の氷山の一角にすぎない。 発掘から得られた情報を分析し、今までわからなかったことを考えていく。  

 

 

蒙古襲来絵詞から船の構造など学ぶ

3Dで船のアウトラインを再現

重要な遺物は化学分析など最新の技術を使って研究する。 (写真 Jon Swanson)

 

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水中・沈没船考古学方法論

ここでは、簡単に水中考古学方法論(特に沈没船発掘方法)を語ってみたいと思う。 サーヴェイ、発掘、保存処理など重要ではあるが、ここでは基本的なことを大まかにしか解説していない。 技術的なことを解説するときりがなく、かなり大掛かりな解説となるため、ほとんど説明を省かせていただいた。 方法論7ステップの一つ一つについて幾つか本が書けるほど技術・方法論がある。 

 

1. 調査目的確認
2.サーヴェイ
3.発掘
4.遺物整理
5.遺物保存
6.調査・研究
7.出版・報告   

 

 

イタリアからの留学生ダンテ。 水中でも笑顔は忘れない  (写真 Swanson)

 

   
1 調査目的確認
 

遺跡があるからといってむやみに発掘する必用は全くない。 むしろそのような調査は取りやめるべきである。 発掘という作業は、遺跡を破壊することである。 ただし、破壊すると同時に記録を取っているだけに過ぎない。 一度発掘されたものは二度と元には戻らないのである。 水中では、比較的保存状態が陸上よりもよく、場所によっては開発などから免れる可能性も高いため、そのまま水中にあったほうが長く保存でき、将来考古学が発達すれば、現在では思いもつかない情報を記録できる可能性もあるだろう。 ただし、直接目で見えないため、多くの場合は人にきずかれず海の藻屑となって永遠に歴史から消え去る。

発掘調査を始める前に、まず、何を学ぶのか、何を調べるのか考える必要性がある。 現在その課題についてどこまで分っているのかを把握する必要がある。 現在存在する資料をまず徹底的に調べることからはじめ、どこに船があるか予測すること、また、どのような構造であったかを予測することができよう。 それにより、この研究が可能なのか、また、必要なのかがはっきりしてくるはずである。 ただ遺物があるからほるのではなく、研究体制を整えなくてはならない。 その遺跡、遺物を最後まで研究し、出版する考古学者、保存処理、遺物保存も発掘の前に考えなくてはならない。

まずは基礎研究。 考古学の現実…発掘はほんの一部。 1日の発掘で得られた情報から1ヶ月は研究できる (写真 Swanson)

 

   

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2 サーヴェイ
 

どこになにがあるか? それを明確に知ることが重要である。陸上と違い、水中の遺跡は見つけにくい!ことが一番の問題点である。 埋立地や橋の建設時など事前調査をせずに開発を進めることがほとんどでダイバーが考古学者に報告するか、実際に水中考古学者が調査をしないかぎり遺跡が見つかる可能性は低いのが現状であろう。 

どこに何があるかを探すとき、船が沈没しやすい場所、または嵐などを避けるために停泊する場所、風待ちに適している場所などを地図で確認したり、直接その場所へ行ってみることも重要である。 潮の流れ、風の向き、貿易ルート上であることなどなど考慮することは山ほどある。 基本的には、深い場所よりも浅瀬、または、水面下の地形変化の激しい所などが沈没船の集中する場所である。 岩場よりも砂地のほうが木材の保存状態は良い。  

サイドスキャン・ソナー、マグナトメーター、金属探知機のたぐい、その他にもROV(水中ロボット)を使って水中を探索することもできる。 ソナーなどは、音波の反応の違いで水面下の状態を調べる技術であるが、遺物が小さかったり、砂の中に埋もれていると見つけにくくなる。 鉄を多量に使用している船は比較的見つけやすいが、木船、特に刳船などは探索しにくい。 基本的には、船の後ろに機材を付けてグローバル・ポジショニング・システム(GPS)などを頼りに海域を調査する。 ゆっくり船をはしらせるのだが、波が高かったりするとなかなか良い結果がでないものである。 サーヴェイは機材など専門的になることが多く、簡単に使えるものではない。 ただし、最近では、技術の進歩により、多くの人に、より簡単に、しかも安く機材を提供できるようになってきている。

あまり信憑性がないかと思われるが、ダイバーを楽しむ人たちに水中考古学の重要性を知ってもらうのが実は一番確実なサーヴェイの方法である。 目で直接確認することが遺跡を確定するのに重要である。 考古学者がいくら潜って遺跡を探そうと、なかなか見つかるものではない。 トルコでは過去にスポンジ・ダイビングが盛んに行われており、彼らの聞き込み調査により幾つかの沈没船が発見されている。 まず、遺跡・遺物のようなものを水中で見つけた時には、引き上げたりせず、また、動かさずに異物が何であるかを確認すること。位置をなるべく正確に記録して、水中考古学者に連絡を取ること。

サーヴェイといっても、いろいろと種類がある。 まず、遺跡の有無を確認するもの、そして、遺跡があると分かっている場合には、遺跡・遺物の内容の把握もサーヴェイである。 この場合、発掘との違いは、実際に遺物を引き上げるかそのまま水底に残しておくかの違いである。 遺跡の一部を発掘するかたわら、遺跡の全域をサーヴェイするのが通常の場合である。

ソナーやマグナトメータはサーヴェイには欠かせない (写真 Swanson)

 

船の後ろに取り付け作業を始める (写真 Swanson)

 

 

 

 

 

イエローサブマリン(?)を使っての調査 (写真 Swanson)

 

ソナー写真。 沈没船も形がわかるほどきれいに見える (写真 INA) 

 

直接確認が確実だが… (写真  Swanson)

 

   
3 発掘
 

 

水中での発掘について。 これは解説をしだすときりがなくなるほどいろいろと書くことがあるが、ごく基本的なことにとどめておく。 実際には、陸上の発掘と目的は同じである。 どこに何があるかを正確に調べること、そしてすべての遺物が正確に写真と実測図などで記録されることが大切である。 遺物が見つかってもすぐに取り上げるのではなく、他の遺物との位置関係が過去の鍵を握っていることを把握していただきたい。 また、遺物は壊れやすいので、取り扱いには最善の注意を払うこと。 発掘とは“遺跡を破壊していること”を決して忘れてはならない。 水中にある遺物は空気に触れると乾いて壊れてしまう。 そのため、つねに水の中に浸しておく必要がある。 木材などは、水を含んでスポンジのような状態であることが多い。 一度乾くと、木の細胞が破壊され、見事にボロボロに崩れ去っていくのである。 遺物を乾かさないように一時保管場所へ移すことも発掘手順のひとつである。簡単に言うとそれだけなのであるが、実際に発掘を行うには、技術が必要である。ダイビングができること、考古学的知識を有していること、そして、遺物を大切に扱う心構えがあることがまず第一条件である。 経験をつんだダイバーを水中考古学者にするよりも、経験をつんだ考古学者を水中考古学者にするほうが簡単。

ここでは、次の3つに的を絞って発掘方法を説明していこう。


A どのように水中で掘るのか?
B どのように正確な位置を記録するのか?
C 水中にあるがために…   


A ドレッジと呼ばれる吸引力を利用した掃除機のようなもので水底の砂を吸い上げていくのだが、よく間違って理解されているのがこの使い方である。 ドレッジは、掘るための道具ではなく、巻き上がってくる砂を除去するための道具である。 手で小さな波を起こし、巻き上がる砂を吸い上げていく。 遺物があるところに直接ドレッジを使うことは小さな遺物を吸い上げてしまうため、行われていない。 遺物が姿を現したら、周りの砂を除去し、番号を与える。 出土した直後の写真など必要に応じて撮るべきである。

B まず、遺跡の大まかな分布が分かったあとに、目印となる基準点を定めることが先決である。 基準点はその場で作るか、大きな岩などを使用する。 釘などをうちつけ、目立つようにしるしをつける。 基準点は1つではなく、幾つか必要である。 この作業はドレッジなどで発掘を行う前にすべきである。 これらの基準点の位置関係を性格に記録し、時々、ずれていないかを再確認すること。 これらの基準点を参考に水中にある遺物の位置を記録していく。 遺物の位置関係は3次元の広がりを正確に記録することが目的である。 すべての遺物には番号が与えられ、記録される。

陸上の発掘と同じように糸などでグリッドを敷き、位置を記録することが望ましいが、それができない場合もある。 そのときには、基準点から、テープ・メジャーなどで、三角法で場所を確認する方法(Direct Survey Method)や、持ち運びのできるメタルのグリッドを使う方法などがある。 DSMは、陸上での測量にも使われることもある。 3つの固定された点からひとつのポイントまでの長さを測ることでその位置を3次元で正確に知ることができる。 簡単なサーヴェイや透明度が悪く他の実測方法が使えないときに便利である。 ただし最近では、新しいテクノロジーの発達により他の実測方法が使われることが増えてきた。 竜骨がまっすぐに残っているときは、それをグリッドの一部と使用しても良い。 音波測定や、写真実測なども最近では盛んに行われているが、鉛筆と紙を使って実測する方法も簡単で、時にはコンピュータよりも確実な場合もある。 ハイテクを駆使して発掘を行うのと同時に、ローテク(またはノーテク)でも記録することが必要である。記録が行われた後、3D−グラフィクス化したり、長期保存でき、また誰でもすぐに情報を得られるようCDなどに書き換えることも必要である。 どのような方法をとったにせよ、できるだけすべてのことをノートなどに記録しておく。 遺物の位置関係だけでなく、発掘方法もきちんと記録・保存をしておくと、後で何か問題があったときにどこでどう間違えたのかを知ることができる。 余裕があれば作業に参加したメンバーにその日の作業内容などを書きとめておくと良い。

C 水中は本来人間には適さない環境である、 そして遺物は環境を選ばない。 時によっては、透明度のまったく無い場所での発掘、また、潮の流れの速い海域など悪条件が付きまとうのである。 遺跡が深い位置にあればそれだけ発掘する時間が短くなる。 見えない状態での手探りでの発掘も頻繁に行われている。 遺物を水面に引き上げるのにも注意が必要である。 繰り返して言うが、遺物は常に水に浸かっている必要がある。 また、大きな遺物を上げる際、ダイバー同士のコミュニケーション、しっかりとした準備が必要である。 ほとんどは、経験がものを言うことが多い。 発掘の際には、水中での作業経験が豊富なダイバーがいることが望ましい。 私は、まだダイビング経験が浅いため、発掘の際に他の人々に迷惑をかけることが多かったように思える。 水中考古学は、一人で行うものではなく大勢の人々がひとつの目的を達成するために共同で行う作業である。 それぞれのメンバーがひとりひとりの得意・不得意を認知し、自分が行うべきことを把握し、最善の努力をはかることから始まる。 このことを理解してもらえれば、興味とやるきがあれば誰でも水中考古学者になれるはずである。

テープ・メジャーが絡まると大変だ (写真 Swanson)

発掘で使う機材いろいろ

ドレッジでの作業 (写真 KOSUWA)

遺物の位置を正確に記録すること!

 

 

DSMは暗闇で遺物の位置関係をはかるのに最適

 

写真撮影はこまめに。最近では写真実測なども可能。 (写真KOSUWA)

 

地上で発掘方法を練習することも大切

 

 

   
4 遺物整理
 

おもに水中での写真や実測は遺物の位置関係を記録するためであって、遺物それぞれの写真撮影・実測が必要である。 写真はカラー・デジタルなど幾つかのフォーマットで撮ること。 もちろんすべてのフレームに縮尺図と遺物番号が必要である。 白黒写真は昔はよく使われていたが、デジタルカメラの普及により他のフォーマットで撮る必要性はなくなってきている。 写真は、最低4枚(上・下・右・左)は必要。 写真を整理するために、データベースを作るべきである。

実測の前に細部まで観察をし、 遺物の特徴を書きとめておく必要がある。特に釘穴や加工痕などを見逃さないよう注意したい。 たとえどんな細かいことであれ、何か特徴的なことがあれば、書き留めておくこと。 木材などの場合、一人の観察だけではなく2−3人別々に遺物を観察して結果を照らし合わせるとより正確に観察することができる。 

写真の他に、実測図を書く必要がある。 小さな遺物は1:1の縮尺で書くことが望ましいが、船財など、かなり大きな遺物を実測できない場合は1:5など。 実測も写真と同じく、4面と断面図などが必要となる。 縮尺図、遺物番号など忘れずに記入すること。 実測の方法はいろいろあるが、木材の場合、レーザーポインターを使用した実測方法、または、ガラスを直接遺物に押し当てて実測する方法など、様々である。 正確に記録するため、いろいろと工夫を凝らし自分が一番得意な方法を探してみることを勧める。 実測に関して一言。 絵のうまい下手は関係ない、ただ、遺物の特徴を正確にとらえることが目的であって、だれでもすぐに描けるものである。  

写真、観察結果、実測図はファイルなどに保存するのと同時に、データベースなどを作りいくつかのフォーマットで保存すること。 火事などでデータをなくす可能性もないわけではないので、あらゆる方法をして記録したものをこれからの考古学者にゆだねなくてはならない。 データベースや、観察結果など10年20年たってもすぐに見てなんであるかわかるように簡潔に分かりやすく記録しておくこと。 

 

遺物を引き上げた後の実測。 釘の位置、角度などを記録する

大きな遺物もしっかり実測を行う。 (写真KOSUW)

 

 

 

 

 

レーザーポインターとペンを組み合わせて使う。水中の遺物をガラスの上からなぞるだけで実測できる

 

写真は物語を語るのに必要不可欠。 おなじみの”てつはう” 実測図よりも写真が効果的な場合も(写真KOSUWA)

 

 

バックグランド、光の方向など、考えて写真を撮る。 この写真はバックグランドはよくても影が残っているのでとりなおし (写真 Swanson)

 

 

 

   

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5 保存処理
 

 

水中にある遺物は乾かしてはならいことをまた強調しておきたい。 これが、遺物保存の第一原則である。 水は遺物に様々な変化をもたらす。 そして、一度乾いてしまうと取り返しがつかないほど崩れたり、変形したりする。 保存処理とは水を含んだ遺物を本来の特徴を損なわずに脱水し、元の形にもどす、また、遺物を空気中でも現状維持できるように様々な用法で加工することを言う。 忘れてはならないことは、遺物を大切に扱う心。 また、失敗を恐れずいろいろと実験をすることである。 保存処理を行う際、細かなことでも記録をとっておく必要がある。 遺物が失敗に終わっても、この記録があることで、何が問題であったかを知ることができ、また、時にはもとの状態に戻すことも可能である。

遺物の種類によって様々な加工方法があるが、ざっと解説してみたい。
A 有機遺物 −−− 木材、布、など
B 金属遺物 −−− 釘、青銅器、など
C 石器、土器 など

A 木材、繊維などの有機遺物は多孔質のため、水を多量に含み、また細胞が崩れやすくなるため、現状維持が非常に困難となる。 木材はフナクイムシなどに侵食され、スポンジのような状態であることがほとんどである。 まず、海水から発掘された場合には脱塩処理を行う。 淡水につけておき、しばしば水を取り替えることで遺物の塩度を下げることができる。 水道水のほかに雨水なども使用するとコストが安くすむ。 

有機質の細胞は水を含んでいる状態で安定しているが、一度乾くと細胞壁が崩れるため、水の変わりとなるもので細胞壁を強化する必要がある。糖(スクロース、トレハロース)やポリエチレン・グレコール(PEG)などがこの役割を果たす。 (蜂蜜などでも木材を保存することが可能) 有機物を浸している水の中に徐々にこれらの薬品を入れていくことで、すこしずつ細胞の中の水を糖やPEGに置き換えていく。 最初は5%ほどから始めて、濃度を高めていく。 このとき、遺物の比重と水の比重を考慮に入れて、濃度を高めていく必要がある。 大きな木材など3−4年以上かかることもある。 糖やPEGには様々な種類があり、分子の大きさなど、いろいろと違いがある。 PEGに関してはPEG#の低いものほど(PEG350)分子が小さいため、木の芯までPEGが浸透するものの、完成した遺物は柔らかくなってしまう。 PEG4000などはその逆で、完成した遺物は、硬く壊れにくいものの、芯までPEGが行き届かないこともある。 PEG350などで最初の数週間浸した後、PEG4000などで処理することで、ちょうど中間の結果を得ることが出来る。 

糖やPEGの使用は、専門的知識に頼ることが多い。 有機物の種類、木材であれば、木の種類、有水率などの違いで保存処理方法を変えていかなければならない。 もし、遺物が頑丈で、水を少ししか含んでいなければ、アルコールなどに入れて脱水する程度で長期保存できることもある。 難しいようにも思えるが、少しの勉強と実験とで習得できる技術である。 最近では、PEGの使用が遺物の長期保存に問題があることが分かってきたのと、鉄などが混じっている遺物にはPEGが使用できないことから、世界各国であたらしい処理方法を模索中である。 数年後には、PEGに変わって新しい物質で保存処理を行うことだと思われる。

比較的新しい処理方法の一つに、シリコン・オイルを使う方法がある。 シリコン・オイルの値段は高いため、小さく貴重な遺物に対しての使用に限られているが、値段が下がってきているようである。 PEGにくらべ、処理時間が短く、また、完成品は色、つやなどもきれいに出来上がる。 PEGとことなり、金属と化学反応を起こすこともない。 使いかたは、シリコンに遺物を浸し、しばらく減圧機にかける。 その後、表面などの余分なシリコンを除去したあと、触媒させれば完成である。 繊維や布などごく簡単に手早く保存処理できるため、使用例が増えている。 シリコン・オイルの他にも、フリーズ・ドライやロジン(松やに)などを使用して保存することも行われています。

B 金や銀は水の中で比較的安定しているため、保存処理をほとんど行う必要がない。鉄や青銅などは長期海水に浸ることによって腐食し、水の成分と反応を起こし、また、周りの貝殻や砂などと結合をし、コンクリーションと呼ばれる大きな物質に変化してしまう。 時には、鉄がすべて抜け出してしまうこともある。 X線写真などを撮ると、元の遺物の抜け殻のようなものが残っていることがある。 コンクリーションに穴を明け、型を取って遺物の原型を学べるが、この場合、実物の遺物は残っていないため、保存することはできない。 また、コンクリーションを壊さないといけないため、失敗すると遺物の情報を失う可能性もある。 最近では、コンクリーションのX線写真などをデジタル化し、コンピュータで再現することもできる。 また、3D-プリンターなどを使って実物のレプリカを作ることもできる。 遺物が残っているときは、コンクリーションをドリルなどでぶち壊すのがほとんどである(これが結構楽しかったりする)。 遺物を傷つけずに最善の注意を払いコンクリーションの壁を少しずつ壊していきます。 こうしてコンクリーションから取り出した遺物は完全でないものや錆付いていることが多く、もろいので、取り扱いには充分気をつけること。

鉄がすべて抜け出してしまわないとき、また銅製品などはコンクリーションがないときもある。 そのときに薬品、とくに酸(EDTAなど)に遺物をつけることで錆を落とすことができる。 酸の扱いには充分きをつけることと、遺物の表面も溶かしてしまう可能性があるので、頻繁に遺物の状況を確認すること。 一晩酸につけておくことは避けたい。 そのはかには、ER(電子還元法)と呼ばれる方法をここでは解説してみる。  

突然ではあるが、小・中学校の理科の実験を思い出してもらいたい。基本原理は、錆を落としてもとの状態に戻すことである。 金属は水の中では電子の交換が空気中より頻繁に行われる。そのため、金属が電子と結びついたり離れたりし、錆は水中の酸素(O)と 鉄(Fe)が反応してできる。 

錆を戻すには、微量の電気を遺物に流すことによって少しずつ電子(2e)を与えることによってもとの状態に戻すのである。 3−5%のNaOH(またはNaCO)を用意し、容器の壁をスチールで囲います。 スチールをプラス、遺物をマイナスの直流(3−5V)電流を流します。 (発生する気体は有毒なのであまり吸わないこと!) 水の塩量 (塩化ナトリウム Nacl)を毎日はかり、1000ppm 以上になったら新しい溶液に換えます。 最初は、すぐに1000ppmを上回りますが、そのうち1000ppmまでなかなか上がりにくくなってきます。 そのあとは、500ppm おきに溶液を換え、電流を少し上げます。 最初は弱い電流で、少しずつ強くしていきます。 そのうちにNaclがほとんど発生しなくなります。 遺物にもよりますが、1−3ヶ月、時には半年ほどかかる場合もあります。 

このあと、沸騰した蒸留水に遺物を入れます。 ゆっくりじっくり沸騰させることで遺物の中にあった不純物を取り除きます。 この後、TANIC ACIDを表面に塗ります。 これで、表面を錆から守るわけですが、ワックスやポリウレタンなどでさらに表面を塗ることもできます。

C さて、石製遺品の保存について。 これらの遺物はトイレにぶち込みましょう。 詳しく説明すると、トイレのリザーブタンクに入れましょう。 脱塩処理でもっとも有効なのは、きれいな水が常に入れ替わるところにしばらくつけておくこと。 トイレでなくてもいいですが、どこか、水が入れ替わる場所が必要です。 土器、磁器などは海水にあってもほとんど性質が変わることがありません。 そのため、保存処理は簡単。 

陶器などの破片を組み立てることも保存処理の一環と考えています。 パラロイドB72やPVA など接着剤にはいろいろと種類がありますが、水に溶けるのり、アセトンに溶けるのりなど特徴があります。 遺物の表面が加工・塗装されているときなど注意が必要です。 のりが塗装をはがしてしまうこともあります。 

遺物、特に木材はほとんどボロボロの状態であることが多い

大きな遺物、特に船などは保存するのに10年以上かかることもある (写真 Swanson)

繊維質のものなどは特に保存処理が難しい

鷹島で発掘された碇はただいまPEGで処理中

木のへらでPEGやシリコンでの保存状況の実験を行う

これが噂のコンクリーション

ドリルなどで少しずつコンクリーションを壊していく (写真 Swanson)

コンクリーションの中身はこれ

 

ERをセットアップする。 マイナスは遺物、プラスはスチールに取り付ける

3D-プリンターで遺物のレプリカを復元することができる

3D-プリンターは石膏で型を取ります。これからもっと頻繁に使われるでしょう
   

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6 調査・研究
 
さて、発掘で得たデータはそのままでは何にもしてくれない。 ここでは、 発掘のデータをどのようにしてもっと意味のあるものに変えていくかを説明したいと思う。 基本的には、陸上の考古学論と全く同じである。遺物それぞれの特徴、そして位置関係など得られた情報を分析していき、他の考古学的資料、また、文献・社会学的・建築学資料と照らし合わせる必要がある。このとき、重要なのは、何を得たいか? である。 そして、発掘の結果から果たして答えが得られるか? を問うことである。 

ただし、沈没船を発掘する場合、陸上の考古学とは違ってくる。 もう少し説明すると、仮説・前提を立てる必要性はあまり感じられないというわけである。 それよりも、発掘で得られた情報から、なにを問い出せるかを考え、そしてそこにある証拠から仮説を立て、立証していく方法をとる。 まず、証拠なくして仮説は成り立たない。 この考え方は最近の欧米の考古学論理に対して逆の方法論である。 アメリカ、特に人類学的考古学者は、まず、セオリー(仮説)を考え出し、それを立証するために発掘をする、そして、遺跡どうしのつながり、おおまかな文化の変化を考え、証拠を探していく。 それはそれで良いのであるが、陸上遺跡と水中遺跡では特徴が違っているため、別の方法論をとらなくてはならない。

陸上の遺跡はその数も多く、研究も進み、莫大なデータをかかえ、そして遺跡同士のつながり、歴史の変遷をたどることができる。 ただし、遺跡一つ一つから得られる情報はそれほどの量ではない。 つまり、不完全な遺跡の集まりなのである。 そのため、遺跡同士の関係、そして、他の遺跡から得られる情報を組み入れていく必要がある。 幾つかの遺跡が合わさってひとつの歴史の鍵をほどといていく。 水中遺跡、特に沈没船は、全くその逆といってよいだろう。 水中考古学は比較的新しく遺跡の数も少なく、研究もまだあまり進んでいない。遺跡同士の関係、そして歴史的変遷をたどることは難しい。 そのかわり、遺跡ひとつから得られる情報は莫大なものである。 船が沈んだとき、そこにあるものは(特に商船の場合)だいたい水中に残る。 陸上で、壷(アンフォラなど)の中身が丸ごと残っている遺跡を探すのは難しい、しかし、水中では壷の中身が残っていることが多く、それひとつから得られる情報は大きい。 

陸上遺跡は、使われた時間が長いため、ひとつのイベントよりは、おおまかな生活内容を知ることができる。 水中遺跡は、人々の生活ではなく、その時何がそこにあって、何が起こったのか?を調べることができる。 イタリアのポンペイの発掘を思い出してほしい。 火山の噴火により埋もれた町を発掘するのはどことなく沈没船の発掘に似ている。 水中考古学者は、ひとつの出来事を解明・再現する努力をする。 つまり、水中考古学は遺跡から得られるすべての情報を深く研究する必要がある。 船の構造の地域・歴史的変化を調べることは重要だが、アジアにおいて船が発掘された例が少ないため、昔の船の構造について詳しいことは分からない。 水中考古学の研究が進み、遺跡の数が増えることによって仮説をたて、研究を進めていく方法がそのうち発展するだろうが、今は、日本ではその時期ではない。 地中海の水中考古学は長年の研究により船の構造の時間と空間的変遷がたどれるようになってきた。 

さて、すこし長くなってしまったが、遺物それぞれから得られる情報を最大限に引き出すことがこの学問の目的である。 そのため、ひとつの遺跡を研究するには、多数の専門家が必要となる。 水中考古学は一人では何もできないが、同じ興味を持つ専門家が集まることによってなりたつ。 何か他の専門があっても、この学問に興味があれば、かならず何か研究の対象となるものがある。 また、水中考古学を始めたいと思う人は、必ずなにか自分が得意とするもの、研究目的を見つけ出すことができる。 水中考古学の中でもなにを研究したいのか? それを一人一人が問うことからこの学問は始まる。

 

 

ウル・ブルンの発掘。 世界最古の沈没船の発掘には10年以上もかかった。 今日でも出土遺物の研究は続いている。 (写真INA)

 

ひとつの沈没船から得られる情報は地上の遺跡に比べ多い。 そのため様々な専門家との協力が必要。 (写真 Swanson)

 

 

   
   

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7 出版・報告
 

いくら発掘が成功しようと、良い研究結果が出ようと、その情報を考古学者、また、一般の人にも提供をしないことには盗掘と同じである。 ひとつの遺跡から得られるデータは莫大で、その情報をすべて一般に提供することは難しい。 重要な遺物、研究結果などにかぎり出版するべきであるが、もっと詳しいデータがほしい人のために、簡単にすべての情報を取り出せる必要がある。 データベースの作成、そして、その管理を徹底して行うべきである。 紙などのファイル、そして、CD、オンラインデータ管理会社などにすべてのデータを残しておくことを勧める。 

さて、写真や実測図など、見やすく、また特徴がわかりやすく提供するには、努力が欠かせない。 努力よりも、時間をかけ、見やすくする。 Photo Shop (tm)などの写真、絵画のソフトウェアの他に、3Dメディア Rhinoceros(tm)・ 3D Studio Max (tm)なども使うと効果的である。 一般の読者は、本文よりも写真などに興味をしめす。 もっと水中考古学を一般にも理解してもらうには、見て理解でき、また読んで納得するものでなくてはならない。 インターネットなども利用し多くの人にこの学問を知ってもらう必要がある。 まだ、私はこの分野に関しては素人であるがただいま勉強中である。 考古学ジャーナル、一般図書、海外のジャーナル、新聞、テレビなどメディアはいろいろある。 水中考古学者がもっと積極的に出版していくべきである。 

保存処理などが失敗に終わっても何らかの形で結果を報告する必要がある。 失敗から、成功の秘訣を学ぶのである。 また、自分の結果・報告に対して疑問、問題点をなげかけてくれることを望む。 長いこと集中してひとつのことを行っていると、視野がせまくなる。 そのため、他の人の意見を聞き入れにくくなる。 何か報告した内容に疑問があれば、すぐにしらせてもらいたい、また、他の人の報告書も評論していく。 そうすることによって、少しずつ学問は進歩していく。

水中考古学をれっきとした学問として日本でも設立するには、できることならば国が主体となった研究委員会、それと大学での専門学科の設立を目指したい。 日本に幾つか存在する水中考古学を目的とした団体(アマチュアを含む)などをまとめ、情報を交換し、この学問の発展させる努力が必要であろう。 


水中遺跡の位置関係を知るには簡単に情報を読み取れる3Dメディアなどが便利

見やすいフォーマットであれば難しい船の構造もわかりやすく説明できる

 

 

   
   

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おわりに

 

人間の新しい環境に乗り出していく好奇心と挑戦心が物質的にあらわれたもの、それが“ふね”だと思う。 新しい環境と言えば、宇宙がある。 昔、海が今日の宇宙のように世界を隔てていた時代があった。 昔の人にとって、船は“宇宙船”であったろう。 水中での発掘はまるで宇宙にいるよう錯覚するときがある、そして、発掘しているものは過去の宇宙飛行士の形見なのである。 

思ったよりも長くなってしまいましたが、考古学論についておおまかに語らせていただきました。 水中での発掘は遺跡の特徴、なにを目的とした発掘なのかで調査方法が変わってくる。 しかしながら、基本とすることは同じである。 過去を愛する人、遺物を将来のために守っていく心を持った人の集まりが水中考古学を発展させていく。  トレジャー・ハンティングや水中考古学まがいのものが認知されているが、考古学の目的は遺跡・遺物の保護である。 過去を大切にすること、それが第一原則である。 だれでも同じ気持ちがあれば考古学者として成功するはずである。

水中で遺物らしきものをみかけたらすぐに私、または、九州・沖縄水中考古学協会、もしくはもよりの考古学機関に連絡をとってください この学問に対して意見、質問があれば、なんでも知らせてください。 まだ私は水中考古学者としては未熟ものですが、これからこの学問の発展のために尽くしていきたいと思っています。 

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参考文献

参考文献はすべて英語の本であるが、ここで紹介した文献はすべて比較的探しやすく、まだ絶版になっていないものである。 発掘技術、サーヴェイ方法についての参考文献はとりあげず、船の考古学論を説明している文献と遺物保存処理の本を紹介した。  自分で文献を読んで内容を理解してから紹介するため多少時間がかかることを理解していただきたい。 日本語の文献も紹介する予定。

水中考古学論関係

Babits, E. Lawrence., and Van Tilburg, Hans (edt).

"Maritime Archaeology: A Reader of Substantive and Theoretical Contributions" The Plenum Series in Underwater Archaeology. 1998

 

多数の著名な水中考古学者が方法論・論理について書かれた論文をまとめたもの。 方法論だけでなく考古学とはなんであるか、根本原理から考古学倫理、サーヴェイ方法など幅広く書かれている。 いままで読んだ水中考古学の本の中で一番論理が詳しく書かれている。 ただし、読んでいて途中で寝てしまった論文もかなりあり、また読みにくい本である。 読むのに時間を費やすことは確か。   

 

Gould A. Richard.

"Archaeology and the Social History of Ships" Cambridge University Press 2000

 

人類学をバックグランドとして船と人、社会について書かれている。 方法論、倫理も良く書かれている。 幾つか疑問になる点としては、著者はあまり細かいデータに関して注意を払っていないこと。 船の大きさ、細かな情報が間違っているときがある。 大まかな内容を知りたいとき、また、簡単に読める本を探しているならおすすめ。

 

Gould A. Richard (edt).

"Shipwreck Anthropology" A school of American Research Book、 University of New Mexico Press 1983

  多数の水中考古学者・人類学者が書いたものをまとめた本。 沈没船を人類学的立場から語っている。 ジョージ・バス先生の論文は的を得ている。 このWeb-Siteの”調査・研究”のほとんどのアイディアはここからきている。 他の論文は…というとなんかしっくりこなかった、多少本が古いせいかもしれないが、いまいちである。 バス先生の論文でも近いうちに訳して紹介しますので。 それまで待てない方は、この本を読みましょう。 

 

McGrail、Sean.

"Boats of the World: From the Stone Age to the Medieval Times" Oxford University Press 2001

  おすすめの一冊? 1章で水中考古学の調査方法を説明している。 このWeb-Siteの”水中考古学方法論”のおおまかな内容、”何をどうやって調べるのか”で書いた内容はこの本でもう少し詳しく説明してある。 2章以降では世界各地の船と航海術について説明している。 世界各地の船について書かれているためこまかなデータは間違いだらけ。 400ページも大量の情報について書かれているのでしかたがないのかも? ただし、この本を読めば船の考古学が何を研究の対象としているかがわかる。  

 

Muckelroy, Keith (edt).

"Archaeology Underwater" An Atlas of the World's Submerged Sites. McGraw-Hill Book Company 1980

  船の考古学ではなく、日本で言う水中考古学の手引書。 一家に一冊といいたいところだが、出版年代が古いためあまり価値を見出せなくなってきたのか? 港、水没遺跡、他の水中遺跡について書かれている本はあまりないため貴重な本である。 水中考古学者の中ではこの本は高く評価されているが、自分はあまり読んでみて”これだ”と言うものは感じられなかった。 もう一度よんでみるべきかも。

 

Steffy, J. Richard

"Wooden Shipbuilding and the Interpretation of Shipwrecks" Texas A&M University Press 1994

  ステフィーさんの書かれた本です。 いまでは、とってもいいおじいさんです。 INAのコーランとしての地位を固めた本である。 ステフィー先生なくしてジョージ・バス先生あらず。 INAの影の立役者の船の再構築専門家が書かれた本です。 この本の三分の二は今までに発掘された船の紹介をしています。 残りは船の構造、発掘方法、遺物を実測する際の注意事項、そして船の再構築のガイドラインなどなど。 この本を三度読めばTexasA&Mでの授業は簡単! ただし、あまりにも船の構造だけを重視していること、またほとんどは地中海の船(特にINAが関連した発掘)についてのみかかれていることが気になる。 他にも重要なことがあるのに… 
   
遺物保存処理方法

Cronyn, J.M.

"The Elements of ARchaeological Conservation" Routledge 1990

  水中にあった遺物だけでなく考古学の遺物保存を学ぶにはこの一冊。 絵画、タイル、土器や骨の保存法など幅広くまた詳しく説明されている。 多少古くなってきているのでこのほかにも新しい方法があることを頭にいれておくこと。 専門的になることが多く、興味のない人には全くつまらない本である。 ただし、保存処理を専門としたければぜひ読んでください。

 

Hamilton, L. Donny

"Methods of Conserving Archaeological Material from Underwater Sites" Conservation Manual at Texas A&M

Web-Link http://nautarch.tamu.edu/class/ANTH605/File0.htm

 

Texas A&M の遺物保存処理のマニュアル。 これ一冊で水中考古学の遺物保存処理の基礎が学べる。 時々新しい情報が付け加えられている。 Web-Linkからダウンロードして(もちろん無料)勉強しましょう。 このWeb-Siteの保存処理の内容をもっと詳しく解説してあります。 また、このマニュアルの参考文献も見てみましょう。

 

C. Wayne Smith

"Archaeological Conservation Using Polymers: Practical Applications for Organic Artifact Stabilization" Texas A&M 2002

 

シリコン・オイルを使った保存処理方法の解説。 カラー写真、図や解説など様々。 見てるだけでも楽しくなってしまう。 ウェイン先生はデジタル考古学の授業も教えており、このサイトの出版・報告に関しては彼のアイディアによるものが多い。 シリコン保存方法は先生が特許を持っているためほかではまなべない(らしい)。

 

 

 

リンク
 

水中・船の考古学のWeb-Siteは探していくとあまりにも数が多い。 どれも重要なサイトであり、すべてを載せるのは無理である。 そのため、ここでは特にリンクが充実しているサイトを紹介してみた。 つまり、リンクのリンクである。  

Institute of Nautical Archaeology
 

INAのWeb-Pageです。 現在のプロジェクトや過去の写真などいろいろ。 ビデオ・ライブラリーなどは意外とわかりやすく、水中考古学を知る上では最適。

http://inadiscover.com/inamain.htm

 

INA Web-Link

 

INAのリンクです。 様々な水中考古学関係のWeb-Siteを探すならここ。 アルファベット順なので探すのに時間がかかるかも。

http://inadiscover.com/links.htm

 

Nordic Underwater Archaeology

 

様々な水中考古学関係のWeb-Siteを探すならここ。 水中考古学を教えている学校、世界の博物館などリンクは充実している。 他のWeb-Siteに行かず、ここから始めてみよう。 カテゴリーで分類されているので、わかりやすく必要な情報を探しやすい。

http://www.abc.se/~pa/uwa/

 

九州・沖縄水中考古学協会

 

日本ではおなじみ?の水中考古学協会。 Web-Linkなども日本人に興味のあるWeb-Siteを載せている。 鷹島の調査など情報をえることができます。 

http://www.h3.dion.ne.jp/~uwarchae/

   

 


 

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